映像を作るうえで尺はとても大事な要素です。とくにアニメは絵を1フレームずつ描いたものをつないだ作品なので、実写のようにリアルタイムで動きのスピードを確認することが難しいです。
今はデジタル作画が普及していますが、それでも最初の絵コンテやレイアウト段階では全部の絵を描いているわけではありませんので、実際に動画が入った後の完成映像を想像して作らなければなりません。
そのため、ストップウォッチはアニメづくりでは必要不可欠な道具です。
動きの尺を計っているアニメーターはそんなにいないと思いますが、少なくともセリフ尺をタイムシートに書かなければならないので、ストップウォッチは必須です。
今はむかしのように1音3コマのベタ打ちのシートではもう通用しませんので、セリフの尺は必ず演技しながらストップウォッチで計るようにしましょう。

演出チェックの時、セリフ位置もそうですが、尺が演技に合わないと書いてあるシートを全部直さざるを得ないので、かなり時間とエネルギーのロスになります(´;ω;`)
ストップウォッチの機能
ストーリーは100円ショップで買えるような安価なものから、数万円もする高性能・多機能のものまで、さまざまあります。
最近のスマホはストップウォッチ機能やアプリもありますので、選択肢はたくさんあります。
ただ、仕事に使う道具なので、ある程度は精度と耐久性がほしいところです。
また、あるとないとでは大きく使い勝手が変わる機能があります。
・ラップ機能
ラップ機能とはレースなどの周回のタイムを記録するためのものです。スタートとストップの間の時間を計れる機能です。
たとえば400mのトラックを5周走るレース。開始時にスタートし、走り終わったらストップを押します。その間にゴールを5回通過しますが、最後のストップを除いた4回分の経過時間を計れるのがラップ機能です。
なぜこの機能が必要か。それは1cut内に1つの動きしかしない、または1文章しかしべらないとは限らないからです。
それぞれの動き、セリフの尺の一連の流れを止めずに効率よく測るには途中で細かく時間を区切れるストップウォッチが必要なのです。
たとえば、セリフの途中でワンアクションを特定のタイミングで入れるときや、長尺のセリフがあるときにブレス(息継ぎ)のタイミングを見つけるのに、とても便利です。
「細かく測ればいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、スタートとストップを押す人間の操作は、やるたびに誤差が生じます。一つ一つ小さいかもしれないが、積み重ねると大きな誤差となります。それをできるだけ排除すれば、正確なタイミングが計れるし、効率が上がります。
・メモリー機能
上記のラップ機能で計ったラップタイムを記憶できる。
メモリー機能がないと、ラップタイムを見返すことができません。一度次のタイムを表示させると前に戻せなくなります。
必須にこうとまでは言いませんが、やはりあるとものすごく便利な機能です。とくに長いアクションやセリフだと、シートを描いている途中で今のタイムは、どの部分を計ったのかがわからなくなることがあります。それを防ぐにはメモリー付きのものをお勧めします。
・消音機能
操作音をオフにできるかどうか。
在宅作業の方なら気にならないかもしれませんが、スタジオで作業するとき操作音をオフできると、周りへの配慮ができます。

わざと音を出して、「仕事していますよ~」アピールもできます(笑)
・フレームレート変更機能
普通のストップウォッチは1秒以下のところを1/100秒で計測します。
しかしアニメは1秒を100ではなく、24コマで割って作っています。作品(とくにフル3D)によっては30コマもあります。
そのため、一般的な1/100秒のストップウォッチを使う場合は表示された時間をそのままではなく、24コマ単位に変換しなければなりません。
実は、数は少ないですが、24コマのストップウォッチはあります。
むかしジブリのスタッフが特注で作ったものがありました。しかし、大量生産まではできなったようです。
最近はデジタルストップウォッチの開発が進んでいて、各所が無料や有料で提供を始めています。
・Griffith Stopwatch
・1/24秒計 ストップウォッチ(For Windows)
JAniCAでもデジタルストップウォッチを作っていて、スマホ版もありましたが、今は開発と更新が止まっています。

使う人あまりいなかったからでしょうかね?
できれば続けてほしかったですね…
・FILMMAKER PRO ストップウォッチ
エイワイプロデュースさんから出されたリアルストップウォッチです。
名前の通り、映像クリエイター向けの商品です。しかもフレームレートも選べて、しかもなんと、16fps、24fps、25fps、30fps、50fps、60fps、100fps(通常の1/100秒)と7つもあります!
全部使わないかもしれませんが、ある分には困らないですからね(笑)
Xでの使用感をみていると、普段1/100秒に慣れていると最初は頭が混乱するそうです。
個人的に「秒」と「フレーム」の間に「+」を描き足したいです。アニメは尺を「秒+コマ」で書くに慣れているので、「+」あると多分すぐにコマだと頭で理解できると思います。ご購入した方はぜひ検討して試してみてください。
ただ注意点として、ラップタイム機能はあるものの、メモリー機能はないので、ご購入を検討する際はその点にご留意ください。
おすすめのストップウォッチ
個人的にてかっているのは2つあります。
・CASIOのストップウォッチ
メインで使っているデジタル表示の1/100秒ストップウォッチ。下記の古いモデルです。
上にも書いた通り、精度がほしいので時計の老舗ブランドから出しているものを選びました。自分が欲しい機能が全部入っているのでとても重宝しています。
・ラップタイム(100本まで)
・メモリー
・消音
しかもそんなに高くない!
なぜデジタルではなくリアルストップウォッチを使っているかというと、実際に”押している”感覚が欲しいからです。ちゃんとリズムを刻んでいるのを感じたい派です。あと、持ち運べるのも理由の一つです。モニタを交互に見るより、手元の近くまでおけるのも大きなメリットです。
・iPhoneの標準ストップウォッチ
手元に上記のストップウォッチがないときに使う程度です。画面をタップするなので、押す感覚がなくてあまり好きではありませんね(笑)
でも、すごく優秀です!見やすいですしね。しかも無料(笑)

※5cutの尺を計った時の例:
CUT 尺
1 3+12
2 2+12
3 1+0
4 1+18 か 1+21
5 2+21
「1/100」を「1/24」に速変換
今は絵コンテと演出がメインなので、主にコンテの尺と演出チェック時のセリフを計るのが主です。上で紹介したように、長いこと同じストップウォッチを使っているので、ずっと1/100秒でやってきました。
ストップウォッチのディスプレイの数字を見れば、何コマになるかを瞬時に変換できます。
24コマが1秒(1/100)なので、
1コマは0.0416666…秒です
アニメは3コマか2コマ打ちが多いので
3コマ≒0.13秒、2コマ≒0.08秒、
6コマ≒0.25秒、4コマ≒0.16秒…
このように最初はこの辺を覚えておけば、0.20秒みたいな端数も感覚で5コマか6コマ、どちらかに寄せるでOKです。
経験的に日常的な芝居なら、長いほうに寄せるで問題ないと思います。特にセリフは長めにとっておいた方がパクずれが目立たなくなります。
変換の早見表
| 1/100秒 | 2コマ打ち | 3コマ打ち |
|---|---|---|
| 0.09 | 2 | – |
| 0.12 | – | 3 |
| 0.18 | 4 | – |
| 0.25 | 6 | 6 |
| 0.33 | 8 | – |
| 0.40 | 10 | 9 |
| 0.50 | 12 | 12 |
| 0.60 | 14 | 15 |
| 0.66 | 16 | – |
| 0.75 | 18 | 18 |
| 0.8 | 20 | 21 |
| 0.9 | 22 | 24 |
ざっくりですが、大体こんな感じで近い数字によせて決めています。
セリフの場合は少し長めにとるようにしています。
※口パクも最後は開き口を6コマに伸ばすことがおおいのも理由の一つです。
口パクのシート、定期的に上げてみよう
— 鈴_アニメ演出家 (@gyakusanenshutu) November 8, 2023
←
ラストの開き口は6コマ止めて中→閉じ
→
ラストの開き口は3コマ→中→閉じ
大体の方は→の方で書いてきます
ダメとは言いませんが、そこは好みもあるので… pic.twitter.com/pdrM1KWoqc
絵コンテの場合は基本的に6コマで区切るようにしていますので、
〇+0、〇+6、〇+12、〇+18
のどれかに寄せています。
まとめ
24コマのストップウォッチはまだ選択肢が少ないので、通常の1/100秒のものは今でも十分に使えます。
アナログにせよデジタルにせよ、自分の作業と好みに合ったものを選ぶのは大事です。
演出業なら、ラップとメモリー機能は欲しいところですね。
ベテランでも新人でも、アニメ業界のクリエイターならストップウォッチは必要不可欠な道具です!
今回もここまで読んでいただきありがとうございました!

